2023年04月04日

通天の犀


それを取りて開きて見れば、通天(つうてん)の犀(さい)の角のえもいはでめでたき帯あり(今昔物語)、

にある、

通天の犀、

は、

通天のさいの角のかざりのある帯、

とあり(佐藤謙三校注『今昔物語集』)、

延喜式(治部省)によると通天のさいはその角に光があって天に通じ、雞が見て驚くという、

とある(仝上)。

是は明月に当て光を含める犀の角か、不然海底に生るなる珊瑚樹の枝かなんど思て、手に提て大神宮へ参たりける(太平記)、

が引用されているが、

薬用にされ珍重された、

としかない(兵藤裕己校注『太平記』)。「通天の犀」については載るものが少ないが、

サイの一種、

をいい、また、

犀(サイ)ノ 角ガ通天犀ナレバナニカゴザロフヲヲビニシマショフ(「交隣須知(18C中)」)、

と、

その角。角は鋭く、長さは中国尺で一尺(約24.12センチメートル)以上もあり、よく水をはじく。帯の飾りや薬として用いられ、

通天犀(つうてんさい)、
通天、

ともいう(精選版日本国語大辞典)とある。別に、

水犀(すいさい、みずさい)、

ともいい、

幻獣の一種、

とあり( https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B0%B4%E7%8A%80)

その姿は体は馬、牛の四肢と尻尾を持ち、背中には亀の甲羅があり、額に巨大な角を持っている。その角には高い妖力がある、

とされ、

水を張った容器に入れたら水が真っ二つに別れる、
その角で火を起こせば数千里離れた場所からでも見える程に輝く炎が立つ、
その角で杯を作れば毒酒でも毒を浄化できる、

などの言い伝えがある(仝上)ともある。

霊獣・犀(サイ).jpg

(霊獣・犀(サイ)  http://www.photo-make.jp/hm_2/sai_toubu.htmlより)


犀(さい)北野天満宮.jpg

(犀(北野天満宮三光門・蟇股)  http://www.syo-kazari.net/sosyoku/dobutsu/sai/sai1.htmlより)

通天の犀、

は、寺社の建築装飾で欄間や蟇股(かえるまた)によく見られ、

境界を守るやら火災よけ、

とするらしい。東照宮建物の部位ごとに漆・彩色・金具の仕様を詳細に記載した『御宮並脇堂社結構書』(宝暦結構書)によると、

昔より水犀や通天犀と呼ばれ、建築や絵画・工芸品などに使われていた犀が、いつの間にか変形して体形は鹿に、背中には亀の甲羅を背負い、一角を持つ、体には風車紋、脚は細く偶諦である姿に変わった。犀は我が国で生まれた霊獣である、

とある( http://www.photo-make.jp/hm_2/sai_toubu.html)

海馬、

といわれたり、

天鹿(てんろく)、

といわれたりする( http://www.syo-kazari.net/sosyoku/dobutsu/sai/sai1.html)ともある。また、

霊犀(れいさい)、

ともいい、

心有霊犀一点通(李商隠・無題詩)、

とあるのが、

心と心が一筋通いあうのを、霊力があるとされる通天犀の角の、根元から先端まで通う白い筋にたとえた、

こと(デジタル大辞泉)から、あるいは、また、

犀の角は中心に穴ありて両方に相通ず、

こと(字源)から、

人の意志の疎通投合する(仝上)、
互いの意志が通じあう(デジタル大辞泉)、

意で使う。

通天御帯(つうてんぎょたい)、

という言葉があり、

通天犀にて飾りし天子の帯、

とある(字源)。ただ、これと、

獻象牙犀角瑇瑁(タイマイ)(御漢書)、

とある、

薬用とする、

犀角(さいかく)、

とは別のもののようである(字源)。

インドサイ.jpg

(鎧のような皮膚と、頭部の角を持つインドサイ  https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%82%A4より)

水犀(すいさい)、

とは、

夫差衣水犀之甲者(越語)、

とあり、

水に住む犀の一種、

とある(仝上)。

ただ、水犀の口伝から、現実のサイと混同され、

アジアに分布する犀が角を目当てに乱獲された、

とあり( https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B0%B4%E7%8A%80)、現在サイは、アフリカ大陸の東部と南部(シロサイ、クロサイ)を除くと、

インド北部からネパール南部(インドサイ)、
マレーシアとインドネシアの限られた地域(ジャワサイ、スマトラサイ)、

にのみ分布している( https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%82%A4)

「犀」 漢字.gif

(「犀」  https://kakijun.jp/page/saisei200.htmlより)

「犀」(漢音セイ、呉音サイ)は、

会意文字。「牛+尾」。ただし、本字は、「尸+辛」で、牙がするどいこと、

とある(漢字源)が、意味がよく分からない。他は、

形声。牛と、音符尾(ビ→セイ)とから成る(角川新字源)、

会意文字です(尾+牛)。「獣の尻の象形を変形したものと毛の生えているさまを表した象形」(「毛のあるしっぽ」の意味)と「角のある牛」の象形から、「角としっぽを持つ動物、サイ」を意味する「犀」という漢字が成り立ちました( https://okjiten.jp/kanji2585.html)、

と、「牛+尾」説を採る。

参考文献;
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
簡野道明『字源』(角川書店)

ホームページ; http://ppnetwork.c.ooco.jp/index.htm
コトバの辞典; http://ppnetwork.c.ooco.jp/kotoba.htm#%E7%9B%AE%E6%AC%A1
スキル事典; http://ppnetwork.c.ooco.jp/skill.htm#%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E4%BA%8B%E5%85%B8
書評; http://ppnetwork.c.ooco.jp/critic3.htm#%E6%9B%B8%E8%A9%95

ラベル: 通天の犀 通天犀(つうてんさい) 通天 水犀(すいさい、みずさい) 霊犀(れいさい)
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